まだ誰も知らない恋を始めよう
「実はね、ずっと我慢していたんだけれど。
 力の事も明かしたし、もう耐えられなくなってきたから、はっきり言うわね。
 失礼だけど貴女から嫌な匂いがする……体臭じゃないのは分かってるの、昔から知るダニエルの匂いじゃないもの。
 と言うことは、この部屋に一体何を持ち込んだの?」

 貴女から嫌な匂いがすると、叔母から指摘されたショックで、一瞬息が止まったわたしだったが、体臭じゃないと続けられて、息を吹き返した。

 良かった、そうだよね、だって昨夜もちゃんとお風呂に入って、磨いて来たんだから。


 それで、多分これだろうと、わたしは財布からメイトリクスのノートの切れ端を取り出して、テーブルの上に置いた。
 この行為がちょっとした騒ぎになるとも、思わず。


「うわぁ、これ、これ! これが臭う!」

 叔母は、一旦は手に取ろうとして。
 顔を思い切り歪めて、慌てて手を引っ込め、立ち上がりテーブルから距離を取った。
 憎々しげに紙片を睨んで、手のひらで鼻と口元を覆っている。


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