まだ誰も知らない恋を始めよう
「5年前だとモーリスは大学生だし、ダニエルも高校生で、2人共まだ子供だったのに、わたしは自分の生活を立て直すのを優先して、顔を見せなかった」

 それを叔母がお詫びと言うのは違う。
 信じた人に裏切られて、離縁して戻ってきて、心身共に大変な時期が続いたんだと思う。
 知らなくてもいいものまで知ってしまう、マッカーシーの力を、恨んだ事もあったろう。


「貴女達兄妹は、無責任な父親と薄情な叔母のせいでまともな大人を知らない。
 愛されて守られるべきだった子供時代は帰らない。
 本当にごめんなさい。
 今更なのは承知しているけれど、わたしの力で貴女の役に立てるなら頼って欲しい」

「あ、あり……が」

 わたしのこの涙は嬉し涙だ。
 御礼の言葉もちゃんと言えない。


「それにね、貴女達が想定しているより解決は早く出来ると思うから、安心しなさい」


 これからどれだけ迷惑を掛けるのか、御礼と共に先に謝ろうとしたわたしに、叔母が片目をつぶってみせた。


「メイトリクスの悪臭が、微かに貴女に付いてると言ったでしょう?
 そいつ、おそらく貴女の身近に居るわよ。
 思い出してみて、軽い接触があったんじゃない?」

 
 軽く言われた衝撃発言に、わたしの息も嬉し涙も止まった。

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