まだ誰も知らない恋を始めよう
 もし、この中にメイトリクスが居るとするなら。
 あいつは孤独でなければならないフィンと行動を共にしていたわたしの事を、邪魔に思っていただろう。
 目障りで排除したくて仕方が無い。
 それと共に、何故わたしにフィンが見えているのか、その理由を知りたいのではないかと思う。
 

 そんなメイトリクス以外からの余計な関心や悪意(悪趣味な興味や妬み等)は、わたしの集中を乱すだけもので、彼等が特に気遣う必要の無い客だと最初に思わせたかった。
 本当に大切なお客様なら、主催のご当主夫妻は出迎えるはずだからだ。


 それでも、その人数から向けられる視線は様々で。
 明らかにわたしに対する悪意をむき出しにしている若いメイド2人が居たけれど、無視出来る程度のものなので気にせず、目線で全員の仕分けに入る。
 
 

「少し、あの娘とあの娘と、あの年増からも臭うけど、メイトリクス程酷い臭いじゃないわね」


 叔母が向けた視線の先には、可哀想に年増と言われたグレンダが立っている。
 彼女は奥様や坊っちゃんには考えを改めても、わたしには相変わらず厳しい視線を向けていた。


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