まだ誰も知らない恋を始めよう

59 操られた男と破壊活動が得意な彼

 まさか、彼が? メイトリクスなの? 

 そんな訳が無いと否定したいけれど、兄から聞いた、事なかれ主義のロジャー・アボットと。
 わたしを追いかけてまで難癖を付けてきた、この目の前の男が同一人物とは思えない。
 

「君は伯父夫婦と知り合いだと、ステラには黙っていたんだろ? 
 伯母と親しげに抱き合って、ステラに見せつけてさ、ドレスの色も被せてきて、本当に友達?
 彼女はメイクを直しに行ったんじゃない、あんたが来たから、逃げたんだ。
 僕はね、上手くいくように朝から準備もしてた。
 伯母の好きなお菓子も持参して、伯父の気に入りそうな話題を振って。
 なのに話の途中で現れて、よくも僕達の邪魔をしてくれたよね」

「……この時間に来るように仰ったのは、ペンデルトンさんです。
 その前に、約束無しで割り込んで来られたのは貴方の方ですので、文句があるなら、あの方に言えばいいでしょう?
 年下の小娘には言えても、本家のご当主様には何も言えない?」

 一方的に詰られて、つい煽るように言い返してしまった。
 フィンの従兄でも、ステラの婚約者でも関係ない、ここまで言われたら。


 このロジャーといい、あのニールといい。
 どうしてわたしは2度も、同じレベルの男に罵られなければならないの?
 

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