まだ誰も知らない恋を始めよう
「フィニアスさん、姪を助けてくださって、本当にありがとうございました。
 どうぞ、わたしの事は敬称を取ってください」

 アリアさんは頭を下げて、俺の方に手を伸ばしてくれたが、当然のように俺は、その手を取って握手出来ない。 


「いえ、僕の方こそ、ダニエルさんには色々と助けて貰いました」 

 ダニエルが通訳した俺の言葉を聞いたアリアさんは黙って微笑んで、何度も頷いてくれた。
 レディ・アリアの外見はモーリス卿と似ているが、中身も似ているなら、優美な見掛けとは違うユニークな女性なのかも知れない。



「アリア叔母様、ベッキーさん、それからフィン。
 もしかしたら、と思う事があります。
 話を聞いてくれますか?」


 ダニエルが真面目な表情をして、俺達に言う。


「ペンデルトンさんよりもロジャーさんの方に、メイトリクスの臭いが強く移っていて。
 その影響で、ロジャーさんが普段では考えられないような行動に出たのだとしたら……
 お2人に共通する人物は、1人しか居ません。
 その人とメイトリクスとシーバス夫妻がどう繋がっていたのか?
 それはまだ分かりませんが、別館にも本館にも自由に出入りが出来たのは……」

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