まだ誰も知らない恋を始めよう
祖父が温室に設置されているガーデンチェアから立ち上がり、叔母の顔をしたメイトリクスを抱きしめて歓迎した。
狸と言われ続けた祖父は、父以上に自分を相手に合わせる事が出来るようだ。
流石に上手く笑えず無表情を貫く父に比べて、愛娘を殺したメイトリクスに対しても、笑顔を崩さない。
今はまだ『その時じゃない』と知っているからだ。
つい先程まで、父から事情を明かされて泣き崩れていたのに。
「皆の前で渡せば、支障があるからな。
愛しいカレラ、先にここでお前に贈っておきたかったんだ。
おい、ヴィッキー、アレをくれ」
髪を灰色に染め直し、伏し目がちな祖父の侍女に扮したベッキーさんに、早く渡せと急かす素振りの祖父の手が伸びてきた。
ベッキー視点なので、彼女の様子は見えないが、畏まりました、のセリフと共に、綺麗にラッピングされた台形のネックレスケースを祖父に渡した手元が見えていた。
狸と言われ続けた祖父は、父以上に自分を相手に合わせる事が出来るようだ。
流石に上手く笑えず無表情を貫く父に比べて、愛娘を殺したメイトリクスに対しても、笑顔を崩さない。
今はまだ『その時じゃない』と知っているからだ。
つい先程まで、父から事情を明かされて泣き崩れていたのに。
「皆の前で渡せば、支障があるからな。
愛しいカレラ、先にここでお前に贈っておきたかったんだ。
おい、ヴィッキー、アレをくれ」
髪を灰色に染め直し、伏し目がちな祖父の侍女に扮したベッキーさんに、早く渡せと急かす素振りの祖父の手が伸びてきた。
ベッキー視点なので、彼女の様子は見えないが、畏まりました、のセリフと共に、綺麗にラッピングされた台形のネックレスケースを祖父に渡した手元が見えていた。