まだ誰も知らない恋を始めよう
 成人済みの息子が5日くらい姿を見せなくても、男親はあまり気にしないのだろうか。
 もし普段からモテ男のフィンが外泊を繰り返していたのなら、そんなに心配はしないかもだけど。


「俺のこと、いっつも外泊してるバカ息子が、って考えてる?」 

 うーん、口には出さなくても、顔に出ていたか。


「……そんな感じだから、父には最終的にもうどうにもならない時に、って思ってる。
 祖父には、それ以上に今はいいかな。
 あの人、今回の俺の行方不明を報告されても、男は家を出て色々経験して戻ってきたらいい、なんて笑ってるから」

「お祖父様も家出だと思って……」

「……で、3日目の水曜日からは、大学で誰か気が付いてくれないかと、毎日昼休みに合わせてうろついて。
 そうして君に声を掛けられた。
 ……どうもありがとう、ダニエル。
 血が繋がった家族でも仲良くしてた友人でも、誰も俺に気付かなかったのに、君だけが俺を……
 俺を見つけてくれて、本当にありがとう」


 そんな、ちょっといい感じにフィンは言って。

 わたしの右手を両手で包み込むみたいに、彼は握った。

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