まだ誰も知らない恋を始めよう

11 食費を稼ぐわたし

 1人前には足りない魚のソテーとただ茹でて揚げて塩を掛けただけのじゃがいもの夕食を、文句も言わずにフィニアスは平らげた。


「ごちそうさまでした、とても美味しかった。
 すごいな、ダニエルは料理が出来るんだ」

「お粗末さまでした」

 一言だけ、そう返した。
 母が亡くなった中等部の頃から、家の家事はわたしがするしかないからしただけで。
 こんなメニューで、料理が出来るなんて言われると面映ゆい。
   

 それはそうと、あまり遅くまで彼を我が家に居させるわけにもいかないので、食事が終わると直ぐに、わたしは切り出す事にした。


「御礼をいただく前提の話なのに、申し訳ないのだけれど。
 貴方の身体を元に戻す方法を探すのは、毎日はちょっと無理で」

「あ……連休だし、ダニエルにも予定があったよね……ごめん」


 ここへ来た時と違い、あんなに饒舌だったフィニアスの様子が遠慮がちなのは、やはりさっきの報酬云々が彼の中では尾を引いているのかも知れないけれど。
 わたしが毎日は無理だと言ったのは、別にそれで気を悪くしたからではないと伝えよう。


「明日は仕事なの。
 それと来週は大学がお休みだから、平日もシフトに入れて貰ってるし。
 その時間以外なら手伝える」

「仕事? 君は子爵家のご令嬢なのに?」
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