まだ誰も知らない恋を始めよう

15 見えない存在にされた彼

 わたしの友人のステラ・ボーンズは可愛い系だ。
 確かに外見は、華やかな美貌のマーゴット・クレイズとは違うけれど。
 

「ステラさんが、あいつのいつものタイプじゃ無い、ってだけの話なんだけど。
 ただ俺の行方不明の噂を、ロジャーが大学で彼女に確認させているのが、引っ掛かるんだ」

「そうね、貴方のお父様とお祖父様があえて単なる外泊や家出みたいに扱って静観しているのに、何故それを、ロジャーは行方不明だと部外者のステラに話したのか?
 そこはわたしも疑問に思ったから」
 
「……これはまだ公表出来ないんだけど、5年後祖父が会長から退いて、父がそこへスライドして。
 経験不足の若輩者のくせに、って感じの俺を社長の座につかせる事が内々で決まって、各方面でそれに向けて調整している最中なんだ。
 君が言ったように父達があえて俺の行方不明を静観しているのなら、その理由は今は騒ぎにしたくないからだろう」


 26歳で社長になるの!?
 フィニアスの口ぶりから察するに、本人は喜んでいないみたいなので、おめでとうございます、なんて言ったら嫌味に捉えられそうで、わたしは御祝いは言わない事にする。
 内心、ますます遠い人になっちゃうね、と思いながら。
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