まだ誰も知らない恋を始めよう
「そうね、今日は休日で、平日より終バスの時間が早かった」

 これまで終バスに間に合うよう、フィニアスを追い出していたけれど、今日は話を聞いて貰っていたから忘れていて、それで兄が駆け付けたんだ。

 兄はチラッとフィニアスを見て、わたしの肩に手を置いた。


「こいつが悪い奴じゃないのは分かったから。
 この家を出ないよな?
 エルが鬱陶しいなら、魔法は解いて貰うからな?」

「……兄さんがわたしのために掛けてくれた保護魔法を解除して欲しいんじゃない。
 知らなかったから腹が立ったの。
 もし他にも魔法が掛けられているなら、隠さずに全部教えて」

 兄妹喧嘩を、いや兄はわたしと争う気なんて無いから、わたしの言いたい放題だけれど。
 それをフィニアスに見せたくないから、これ以上は止めることにした。


 あーぁ、……最悪だ……
 彼が黙っているのは、柄の悪い兄を問い詰める、それ以上に性格のキツいわたしに呆れているからだろう。
 と、思っていたのに。
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