まだ誰も知らない恋を始めよう
「親父自体には、勇者の要素なんか無いぞ。
 魔法庁から派遣された魔法士と組んで、この国から逃亡した黒魔法士を追ってる。
 親父にはそれを退治する魔力は無いが、その存在を見つける能力があって、それで白魔法士が捕まえる」

「いやぁ、それでも凄い、凄いです。
 黒魔法士ハンターですね、凄いです。
 マッカーシー子爵がハンターなら、モーリス卿は?」

 未だに父に反抗心を持ち続けている兄も、フィニアスから父親を褒められて気を良くしたのか、今度は
「俺の本当の仕事はだな……」とあろうことか、密命を言い掛けて、自分でも乗せられた事に気付いたのだろう。
「お前、口が上手すぎる……計算無しで恐ろしい奴」と、改めて身構えていた。


「あ、すみません、申し遅れました。
 フィニアス・ペンデルトンと申します。
 ダニエル嬢とは同じ大学、同じ学年で、経済学部の3年で……」
 
 あぁ、まずい!
 このまま自己紹介がてら、フィニアスに大学の話をされるのは。
 

「そんな話より、あれ、あれ何だっけ!」

「エル、後にしろ」

 わたしは話題を変えようと思って口を出したのに、一瞬でわたしの企みが見えた兄に流された。


 遅かった……どうする、わたし!?
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