まだ誰も知らない恋を始めよう

23 愚かな企みがバレたわたし

「経済学部で、エルと同じクラス?」

「いえ? 彼女は史学部の優等生で有名で、俺なんかとは全然違う……」

 経済学部ではないとバレた!


「史学部? ……エル、俺には経済学部って言ってたよな?」

 ……兄がわたしの顔を見ていた。
 きっと今わたしの頭の中に、わたしを信用して諸々の手続きを任せてくれた兄を騙して、史学部に入学した邪な計画が浮かんでいるんだろう。
 それを見た兄の顔が歪んで見えた。


「アイリーン・シーバスか!?
 あの女に近付いて、何をするつもりだった?」


 金曜日に最終学年ではアイリーン・シーバスのゼミの一員になり、その前にこの秋の国外活動にも参加してもいい、と本人から言われた。
 彼女の教えを受けたい、そのために史学部を選んだ事を、多忙な兄には黙っていた。
 ……違う、騙していた。


 大学を卒業して直ぐに魔法庁の特務で秘かに入庁し、そこから外務省へ派遣される、引っ越しする等の兄のどたばたに紛れて、受験願書も入学書類も兄の名前で自分で記入して。 
 悪巧みが見える兄の前では、その事を極力考えないようにして、別居する悲しみをずっと装って、経済学部に入学したと騙していたわたしだった。


「……俺を手伝おうとしたのか?」

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