まだ誰も知らない恋を始めよう
「それとフィニアス、お前さっき自分とは無関係だと言っていたが、もしかしたら、今のお前の状態にも関係があるかもしれない。
 あの女が集めているのは、真っ当な歴史的文化財の類いだけじゃない。
 古代呪術の秘本など、そういう表に出せない怪しげなものにも手を出しているらしいと情報が上がってる。
 魔法は俺の専門外だし自信は無いが、お前の存在を消した魔法は古代の怪し気な術によるものに思えるんだ。
 ここに親父が居たら、その痕跡を辿れるだろうけどな……
 はっきり言う、悔しい事に俺にはそこまでの能力は無いんだ」


 わたしは自分を恥じて、もうこれ以上何も聞きたくない状態だったのに、話題を変えてくれた兄のその言葉はクリアに聞こえた。
 言われたフィニアスも、わたしを見て頷く。
 それでわたしは気を取り直して、これまでの経緯と考察を、兄に話すことにした。


 思い上がっていた愚かなわたしも、自分は物事を俯瞰して見られないと気付けた。


 フィニアスの存在を消したモノが、ドナルドとアイリーンとは関係が無くても、兄の持つ能力と知恵を貸して欲しい。

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