神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
俺は密閉された容器を開け、糠漬けを取り出した。

糠を洗い流し、ナイフでそれをカット。

きゅうりと大根、それぞれ食べやすい大きさにして…っと。

「おぉー…。凄い美味しそうだね」

「あぁ…あいつら、魔導師やめて百姓をやっても生きていけそうだな…」

学生が作ったとは思えない。プロの腕前。

見た目は、お店の和定食の小皿に乗せられている糠漬けと変わらない。

めっちゃ美味しそう。

俺とシルナは、つまようじで糠漬けを刺した。

じゃ、まずは大根からいただきます。

「ぽりっ…」

お、良い食感。

ぽりぽりと、噛めば噛むほど味わい深い。

程よい塩気と、固くも柔らかくもない大根の食感。

…これは…。

「…美味いな」

「うん。売れるよ、これ」

シルナも、びっくりしながら糠漬けをぽりぽりしていた。

大根の次は、きゅうりの糠漬けを食べてみた。
 
おぉ。こっちも美味い。

絶妙な塩加減と、歯ごたえのある食感。

野菜の味もしっかり感じられて、既製品とはまた違う美味しさ。

なんて言うんだろう。俺はお袋いないけど、これがお袋の味って感じ?

いくらでもぽりぽり食べられそう。

そういや、野菜を育てる堆肥や肥料も、自分達で作ってるって言ってたな。

「凄いな…。あいつら、もう魔導学校やめて、農業学校行ったら…?」

「い、いや…。ちゃんとウチを卒業して欲しいよ…」

「…そうだな…」

じゃ、農業学校はイーニシュフェルト魔導学院を卒業してから行ってくれ。

糠漬けを餞別にもらった時は、「何で糠漬けなんだよ」と思ったものだが。

今となっては、この糠漬けだけが、懐かしいルーデュニア聖王国を…俺達の居場所を感じることと出来る、唯一のものになった。

…帰りたいな。仲間達のもとに。

シルナと一緒に…。

「…」

きっとシルナも、糠漬けを摘まみながら、俺と同じことを考えていたのだろう。

二人共、黙ってぽりぽりと糠漬けを齧っていた。

…すると。

「失礼します」

そこに、イシュメル女王の側近であり、実質、俺達の監視役を務めているシディ・サクメがやって来た。

…またお前か。

そろそろ、俺達を返す気になったか?
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