神殺しのクロノスタシス7〜前編〜
…その日の夜。

僕と『八千歳』は、いつも通り黒装束に着替えた。

イーニシュフェルト魔導学院の制服にも、だいぶ慣れてきたけど。

やはり僕達にとっては、この黒装束を着ている方が、ずっと落ち着く。

この服の黒さが、自分の抱える闇を隠してくれるような気がして。

「…『八千代』。マシュリは?」

いつも通り学生寮の窓から、こっそり飛び出してきて。

合流するなり、『八千歳』がそう聞いてきた。

「大丈夫。今夜は週に一度の猫会議の日だから」

今頃彼は、猫の姿に『変化』して。

週に一回行われるという、近所の猫の集会に参加しているはずだ。

猫が集まって、一体何の会話をしているのか知らないけど。

今ばかりは、彼が留守なのが有り難かった。

羽久や学院長の目なら、いくらでも誤魔化せるけど。

マシュリの鼻だけは、さすがに僕達でも誤魔化せないからね。

夜中に勝手に、学院を抜け出す…なんてことをしたら、嫌でもバレてしまう。

「それじゃ…。…安心して行けるね」

「そーだね」

思い残すこと…が、ない訳ではない。

それに、僕だって、まだ死ぬ気はない。

大勢の人の命を奪ってきた以上、死にたくない、とは言わない。

だけど、足掻けば生き残る道があるのに、自ら死を選ぶような甘えた真似はしない。

それでも、死はいつだって、誰にでも平等に降り注ぐものたから。

いつ死んでも良い、という覚悟は出来ている。

ましてやそれが、仲間を守る為に必要な犠牲なら。

その死は、少しも苦痛ではない。むしろ本望というものだ。

僕と『八千歳』は、イーニシュフェルト魔導学院の塀を乗り越え、学院の外に出た。

果たして、戻ってこられるのかどうか分からない。

けれど、行くしかなかった。

一応、置き手紙は残してきた。心配かけないように。

「…じゃあね」

僕達は一度も振り返らずに、夜の闇の中を駆けていった。
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