新海に咲く愛
翌朝、リビングでは姑・美智子が朝食を取りながら貴弘に話しかけていた。
その声には優しさなど微塵もなく、ただ命令口調だけが響いている。

「貴弘、最近奈緒さんにちゃんと言い聞かせてるでしょうね? あなたの妻なんだから、もっとしっかりしてもらわないと困るわ。」

貴弘は母親の言葉に反論することなく、
「はい」と短く答えるだけだった。

しかし、その顔には明らかな疲労感が漂っていた。
美智子から受け続けるプレッシャー――それは貴弘自身にも重く圧し掛かっていた。

しかし彼には、それに逆らう勇気も力もなかった。
その結果、そのストレスや不満を全て妻・奈緒へと向けてしまう。
それが彼自身にもわかっていながら、止めることができない。

「母さん……俺だって頑張ってるんだよ。」

そう呟くように言った貴弘だったが、美智子は鼻で笑うだけだった。 

「頑張っている? そんなもの当たり前でしょう。それとも何? あなたまで私を失望させたいわけ?」

その一言で、貴弘は完全に黙り込んだ。
そしてその夜、自宅へ戻った彼はまたしても苛立ちを募らせ、その矛先を奈緒へ向けた。


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