内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「藍里は?」
「え?」
「俺を夫として認めてくれるか?」
認めるもなにも蒼佑は法的にも藍里の夫であるが、彼が聞きたいのはそんな当たり前の事実ではない。
――一生添い遂げるのに相応しい男かどうか。
それなら答えはイエスだ。
藍里は頬が熱くなるのを自覚しながら小さく頷いた。
すると、蒼佑は運転席を身を乗り出し、助手席に座る藍里の顔を覗き込んできた。
「よかった」
蒼佑が藍里の顎を指で持ち上げた次の瞬間、ふたりの唇がぴたりと重なる。
(誰が見ているかわからないのに……)
フロントガラスを気にする素振りを見せる藍里など、おかまいなしに蒼佑は口づけを深める。
ダメと諫めなけばならないのに、頭がぼうっとしてなにも考えられなくなる。
璃子も寝ている今は、子どもの模範となる親の仮面をかぶる必要もない。
背徳感のあるキスは、藍里を理性から解放し夢中にさせた。
しかし、もっとしてほしいと思った矢先に唇が離れていく。
「続きはまた今度にしよう。これ以上は歯止めがきかなくなる」
「はい……」
蒼佑はそう言うと、運転席に戻り車を発進させた。
身体がまだ燻っている状態の藍里はまともに蒼佑の顔が見られず、窓の外を眺めるばかりだった。