内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「寝ちゃいましたね」
「遊び疲れたみたいだな」
目いっぱい遊んで力尽きた璃子は蒼佑に抱っこされながら、スースーと寝息を立てている。
数分前までキャッキャッと興奮した様子でおやつを食べていたのに、気がついたらレジャーシートに座る藍里の膝を枕にして寝ていたのだ。
「重くないですか?」
「軽いくらいだよ。ずっと抱っこしていたいぐらいだ」
あどけない寝顔を真上から眺める蒼佑の口もとが自然と緩む。目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりだ。
車に到着すると蒼佑は璃子を後部座席のチャイルドシートに寝かせ、起こさないように注意しながらベルトを締めてやった。
「すっかり懐かれましたね」
そう言って藍里は運転席に座る蒼佑を労うため、お茶を差し出した。璃子と遊んだあとだが、彼には帰りの運転もある。
「少しは父親として認めてもらえているのかな……」
お茶を受け取った蒼佑が独り言のように呟くと、藍里は疑念をかき消すように大きな声でまくし立てた。
「もちろんですよ! 璃子は蒼佑さんが大好きです! 最近は寝かしつけのときも『パパがいい』って言うくらいですから!」
璃子が心を開いているのは一目瞭然だ。
鼻息を荒くして反論すると蒼佑は、意味ありげな不敵な笑みを浮かべた。