内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「結婚なんて一度も考えたことがないよ。彼女は思い込みが激しいところがあって、俺を自分の理想の王子様だと勘違いしているんだ。ただ盲目的に慕われても困る。俺には自分の意思がない人形を隣に置いておく趣味はない」
きっぱりと断言されたことで、三年間抱え続けていた重荷がひとつなくなったが、それでも藍里の表情は曇ったままだ。
「まだ不安か?」
「だって、私。見た目も中身も普通で、彼女のような後ろ盾もありません。海老原清光の娘ってだけで、蒼佑さんのお役にも立てないし……」
蒼佑は意思がない人形を隣に置いておきたくないと言っていたが、観賞用としてなら話は別だろう。
藍里は綺麗な人形にすらなれない。
今だって髪は無造作に束ねただけで、化粧っ気も少なく、コレクションルームに溜まった埃で顔も薄汚れている。
「バカバカしい」
蒼佑は藍里の自虐を一蹴した。
「忘れたのか? 俺は藍里が海老原氏の娘だってわかる前から惹かれていた」
蒼佑は藍里の膝裏に腕を差し入れ、ひょいと抱き上げた。
「そ、蒼佑さん!?」
突然身体が宙に浮き、藍里は驚きのあまり素っ頓狂な声で叫んだ。
「俺がどれだけ藍里を想っているかそろそろ思い知るべきだ」
「え、あの!?」
下ろしてほしいと抗議する時間すら与えられず連れて行かれたのは、執務室の奥にある仮眠室だ。