内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「きゃっ……!」
ベッドに下ろされ、思わず悲鳴が上がる。
「藍里がその気になるまで待つつもりだった。でも、もう待たない」
逃がさないと言わんばかりに蒼佑が上にのしかかる。
璃子を見つめるときの慈愛に満ちた眼差しとは違う。
目の前の女性をどうやって愛で溶かそうか、野蛮な欲望に支配され、間近に迫る瞳には熱いものが閃いている。
「俺は藍里を愛してる。それだけじゃダメか?」
真摯に紡ぎ出される愛の言葉からは、彼の切実な想いが伝わってくる。
だからこそ余計に顔を背けたくなる。
「私……蒼佑さんに愛される資格なんてないんです。あのとき電話を掛けなかったのは、自分のためなんです」
他の女性と結婚する彼のために身を引くと、それらしい理由をつけたが、本音を言えば蒼佑に会うのが怖かっただけだ。
面と向かって拒絶されるくらいなら、フィレンツェの綺麗な思い出だけをゆりかごにして、お腹の子どもを育てようと思った。
藍里にもっと勇気があれば、今ごろ未来は違った形になっていたのかもしれない。
璃子の成長を見守る機会を奪ったことに対して、藍里はずっと罪悪感を抱き続けてきた。