内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「そんなことより、藍里! 三角さんと結婚したそうじゃないか。いやあ、めでたい! 後々夫婦になるふたりを引き合わせたのが自分だと思うと誇らしいよ。本当におめでとう!」
「ありがとう、叔父さん」
これほどうれしくない祝いの言葉をもらったのは初めてだ。それにしても、どこから藍里の結婚を聞きつけたのだろう。譲治の情報網もなかなか侮れない。
「それで、叔父さん。私にいったい何の用なの? 悪いけど、仕事中なの。手短にお願いします」
「藍里に聞きたいことがあってきたんだ」
先ほどまでの朗らかな雰囲気とは一転し、譲治は神妙な顔つきになった。
「聞きたいこと?」
「大空を駆ける鷹は今、どこにあるんだ?」
ドクンと大きく心臓が脈を打つのがわかった。
なぜ、大空を駆ける鷹の行方を知りたがるのだろう。
「叔父さんには関係のない話でしょう。私に黙って蒼佑さんにお父さんの絵を売ろうとしたくせに、今さら……!」
声を荒らげ、思わず椅子から立ち上がる。譲治はそんな藍里の憤りなど気にも留めず再び口を開く。