内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
(どうして?)
堂々とした立ち居振る舞いで藍里を威圧した彼女が、精神的に参ってしまうタイプには見えなさそうだった。
「ああ、活動休止については俺も飛行機の中で知った」
翌日、璃子が寝静まったあと、バンコクから帰国した蒼佑に真っ先に麗佳の話をすると、意外な返事をされる。
突然の活動休止報道だったのに、蒼佑はさほど驚いていないようだった。
「バンコクに行く前にはっきり伝えたんだよ。俺は藍里を愛しているから、君の気持ちには応えられないって」
「そんな……」
「中途半端に期待をさせる方がよほど残酷だろう?」
「それは、そうですけど……」
彼女は蒼佑への溢れんばかりの愛をそこかしこに滲ませていた。
方向性はたしかに間違っているかもしれないけれど、その分蒼佑への深い愛情が感じられた。 失恋のショックは計り知れないものがあるだろう。
「お人好しだな、藍里は」
蒼佑は麗佳に同情を寄せる藍里に呆れつつ、ジャケットを脱ぎネクタイを緩めた。