内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「忘れられるわけないだろう?」
蒼佑は壁に手をつき、そのまま藍里を背後から囲い込んだ。
すっかり熱くなった頬に手が添えられ後ろを振り向かされると、視線が絡み合う。
彼の顔が徐々に近づいてきて、ゆっくり目を瞑る。
「んっ……」
最初は唇の形を確かめるような、たどたどしい口づけだったが、次第に荒々しいものに変わっていく。
腰が引き寄せられ、何度も角度を変えては唇が往復する。
藍里はたまらず、蒼佑に縋りついた。身体が熱くてどうにかなりそうだ。
同じ熱量で彼に求められているのだと思うと、頭の中が甘い想像で満たされる。
「藍里を俺のものにしていいか?」
小さく頷くと蒼佑は藍里を抱き上げた。そのままベッドルームに連れて行かれ、優しくマットレスに下ろされる。
「藍里――」
額にキスを落とされ、耳もとで何度も甘やかに囁かれる。ガウンを縛る紐が解かれ、アンティークランプに照らされた藍里の身体がオレンジ色の陰影を作り出す。
「とても綺麗だ」
唯一無二の芸術品を鑑賞できるのは蒼佑だけ。
(もっと見つめてほしい)
恥ずかしくてたまらないのに、すべてをさらけ出したい。
相反する感情に支配された藍里は蒼佑に導かれるままに何度も愉悦を味わったのだった。