内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

(もう……。また誰かが置きっぱなしにしてる)

 誰でも自由に使っていいリフレッシュエリアは社員の共有スペースであり、テーブルの上は片付けておくのが最低限のマナーである。

(忘れ物かな?)

 誰のものかもわからぬ新聞を片付けようと持ち上げた直後、藍里は見覚えのある人物の写真に目を奪われた。

「蒼佑さん……?」

 新聞にはなんと蒼佑の顔写真が掲載されていたのだ。
 ――息が止まるかと思った。
 人違いではないかと思い写真を食い入るように眺めたが、どこをどうみても記憶の中の彼の姿と重なる。

【ミスミビルディングの若き御曹司。新プロジェクトを一気に黒字転換】

 藍里は見出しに書かれていた記事を黙々と読み始めた。
 ミスミビルディングといえば、都心の不動産やビル管理を一手に担う大手不動産ディベロッパーだ。
 メインである不動産業以外にも、ホテル事業やリゾート開発も多く手掛けている。
 記事によると蒼佑はミスミビルディングが発起人となった再開発プロジェクトの陣頭指揮をとり、目覚ましい成果を上げたらしい。
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