内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

(まさか……)

 新聞を読み進めるうちに、パズルのピースが次々とはまっていった。
 思い当たる節はいくらでもある。
 蒼佑が交渉しただけで、飛行機のチケットはすんなり用意されたし、休暇中にひとりきりで豪奢なスイートルームに泊まっていた。
 ミスミビルディングの御曹司なら、当たり前に享受できる特権だ。
 彼の品のよさは生まれ育ちからくるものなのだと、ようやく腑に落ちる。
 なにより、美術品に対する造詣の深さの謎が解けた。
 ミスミビルディングといえば、創業者が美術コレクターとして有名である。
 創業者が収集したコレクションを展示した【三角美術館】は日本における企業美術館の先駆けとして、広く知られている。
 蒼佑が影響を受けていてもおかしくはない。

(蒼佑さんがミスミビルディングの御曹司だったなんて……)

 先ほどまでの浮かれた気分は、一瞬にしてどこかに消え去っていく。
 もし藍里が同じ立場だったらあれこれ詮索されたくないだろうし、面倒事を避けたい蒼佑の気持ちは理解できたが、やはり納得はできない。

(自分だって父親の正体を隠していたくせに)

 おあいこだと、頭では分かっていてもモヤモヤとしたものが頭から消えない。
 図らずとも同僚たちの気持ちがわかった。
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