内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
(旅先で知り合った人と恋人になるってどれくらいの確率なんだろう?)
帰宅した藍里は1DKのひとり暮らしのアパートで膝を抱えながら、フィレンツェから持ち帰った書置きを眺める。
蒼佑の正体を知り、藍里はすっかり疑心暗鬼に陥っていた。
もしかしたら、その気になっているのは自分だけで、彼は旅先だからと少し羽目を外しただけなのかもしれない。
ましてや相手はミスミビルディングの御曹司だ。
周りには藍里よりも美しい女性などごまんといるだろう。
考えれば考えるほど、不安が頭をよぎっていき、藍里の意思を挫いていく。
(父の絵を好きだと言ってくれた蒼佑さんを信じたいのに……)
結局、その夜は何もする気になれず蒼佑への連絡を諦めてしまった。
そのまま、連絡できない日が続いたある日、藍里を絶望の底に叩き落とす出来事が起こる。
それは何気ない芸能ニュースだった。
(うそ……)
出勤途中の電車の中で目に飛び込んできたスクープ写真に、頭から冷水を浴びたみたいに背筋が凍りつく。