内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
【インフルエンサーとして活躍中の猪口麗佳、不動産業界の御曹司とこの冬にも結婚か】
激写された写真には、件のインフルエンサーと蒼佑が腕を組んで街を歩いている姿が映されていた。
彼女はゴージャスな私生活が人気の今をときめくインフルエンサーであり、大手建設会社の御令嬢だそうで、蒼佑にとっても申し分のない相手だ。
目の前に真っ黒なベールが下りてくる。
(全部……全部忘れなきゃ……)
心のどこかでこうなるかもしれないとわかっていたが、それでも希望を持っていたかった。
今となっては彼の息遣いも、絵の魅力を無邪気に語る熱っぽい瞳も忘れないといけない。
藍里はすべてを忘れるように無理やり頭を横に振った。
電車の中でポロポロと泣き出していたら周囲の人から怪訝な目で見られてしまう。懸命歯を食いしばり、胸の痛みに耐える。
――きっと忘れられるはずだった。
ひとつだけ誤算があったとするならば、すでに藍里のお腹にはひとつの命が宿っていたことだった。