内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

(もう、どうしたらいいのよ……)

 再び絵を売り捌こうとする譲治の姿に、ため息が止まらなくなる。
 なんでこんなことになってしまったのだろう。

「ママ~! のどかわいた~!」

 大人の話に退屈したのか、それまで大人しくしていた璃子が急に騒ぎ始めた。

「ああ、ちょっと待っててね!」

 藍里は麦茶の入ったストローマグをマザーズバッグから取り出し璃子に渡した。
 ついでに大好きな子ども用のソフトせんべいも袋ごと渡しておく。

「おしぇんべいだあ!」

 目論見通り璃子はすぐに食いついた。
 ハムハムとせんべいにかじりつき、満足げに麦茶を飲んでいく様子を見守っていると、それまで沈黙を守っていた蒼佑が口を開く。

「海老原さん、こちらの女性はどなたですか?」

 すっかり置いてけぼりになっていた蒼佑は、藍里に視線を送りながら譲治に改めて説明を求めた。

「ああ、私の姪だ。海老原清光の娘と言った方がわかりやすいか?」
「海老原清光の……娘?」

 蒼佑は目を大きく見開き驚いたように藍里を見つめ返した。
 いたたまれない空気に耐え切れず、つい蒼佑から目を逸らす。
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