内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
◇
蒼佑に指定された金曜日の午後二時。
藍里は午後休をもらい昼過ぎに退社したあと、電車を乗り継いで、指定されたホテルのロビーラウンジにやって来た。
璃子は朝から保育園に預けている。
ホテルから保育園までは一時間以上かかるので、逆算すると少なくとも四時にはここから離れなければならない。
シングルマザーには悠長に話をしている時間はない。
(まだかな)
早めに到着したのはいいものの、Vネックのセーターとタイトスカートにトレンチコートを羽織っただけのオフィスカジュアル姿は少しばかり浮いていた。
周りを見回せば美しい装いの人たちばかりだ。
クリスマス直前とあって、ロビーの中央には藍里の身長の二、三倍もある大きなクリスマスツリーが飾られている。
天辺には星を形どったオーナメントが煌々と輝き、気まずそうに身体を縮めている藍里を天高く見下ろしていた。
(璃子が見たら喜びそう)
璃子はビーズやガラス玉といったキラキラしたものが大好きなのだ。
離れていても子供のことばかり考えてしまうなんて、母親らしくなったのだとしみじみ感じる。
そのままツリーに見惚れていると、誰かにトントンと肩を叩かれた。