内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「入ってくれ」
客室の前までやって来ると蒼佑手ずから扉が開かれ、中に入るように促される。
おずおずと一歩足を踏み入れたその背後でパタンと扉が閉まれば、正真正銘ふたりきりだ。
蒼佑が手配したのは、高層階にあるスイートルームだった。
藍里はコートを脱ぎ、所在なくソファに腰掛けた。
「なにか飲む?」
そう言って蒼佑から手渡されたルームサービスのメニューから、一番手頃なものを選ぶ。
「コーヒーをお願いします」
「わかった」
メニューを返すやいなや、蒼佑は備え付けの電話でコーヒーをふたつ頼んだ。
数分後、頼んだコーヒーが部屋に届けられると、早速尋ねる。
「話ってなんですか?」
「わざわざ聞かなくても本当はわかっているんだろう?」
藍里と向かい合うようにソファに座る蒼佑は長い足を見せびらかすように優雅に組み替えた。
「アトリエに連れてきていた子どもの父親についてだ」
当然のごとく璃子の話を切り出され、頭の芯がすうっと冷えていく。
(ああ、やっぱり……)
藍里の予想は最悪な形で当たってしまった。