内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「父親は俺だよな?」
「違います!」
藍里は即座に否定した。
言い淀んだら最後。聡明な彼は藍里の嘘を見抜いてしまうだろう。
しかし、そんな懸命な努力も無駄に終わる。
蒼佑は冷静にテーブルの上のコーヒーカップを手に取り、口に運びながら告げる。
「ここ数年の君たちの動向については既に調べがついている。出産前から今に至るまで、父子関係が疑われるような親しい間柄の男性がいた事実はない」
「そんなことまで?」
再会してから一週間足らずしか経っていないのに身辺調査までされているなんて驚くばかりだ。
抜け目のない蒼佑の行動に思わず舌を巻く。
このぶんだと璃子の生年月日も割れているだろう。生まれた日を誤魔化すという手段も通用しない。
(準備は万端だっていうこと?)
まるで、首に手をかけられじわじわと締め上げられているような気分だ。
「まだ違うと言い張るならDNA鑑定でもするか? 結果は火を見るより明らかだと思うけれど。血は争えないな」
蒼佑は璃子の父親が自分だと既に確信を持っている。
ふたりが同じ場所に居合わせたのは、ほんの数分。
チラリと顔を眺めただけで、自分の子どもだとわかるものなのだろうか?
藍里は一縷の望みを懸けて、最後の悪あがきを始めた。