内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
(俺も変わらないな)
空港で強引に藍里を連れ帰ったあの日からまったく成長していない自分に、自嘲的な笑いがこみあげる。
そうやって、しばらく彼女の横顔を眺めていたら、偶然にも窓越しに目が合う。
蒼佑と目が合うと藍里の顔が見るみるうちに強張っていく。
どうやら、結婚を強引に承諾させた結果、すっかり怯えさせてしまったようだ。
「もうこの辺りでいいです。降ろしてください」
目的地まであと少しというところまでやって来ると、藍里はタクシーの運転手に懇願した。
璃子が通っているという保育園まではまだ距離があるのに、なぜ中途半端な場所でタクシーから降りようとするのか。
「保育園の前まで送る」
「関係者に見られたくないんです。噂になっても困りますし……」
藍里はさも気まずそうに言った。
シングルマザーの藍里が、男性と相席したタクシーで子どもを迎えに来たら、たしかに目立つだろう。
「わかった」
蒼佑はあくまでも藍里の意思を尊重することにした。運転手に改めて指示を出し、タクシーを路肩に停車してもらう。
「また連絡する」
「わかりました。送っていただいてありがとうございました」
藍里は軽く会釈しタクシーを降りると、一度も後ろを振り返らなかった。