内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「蒼佑さん?」
藍里のことばかり考えていたせいだろうか。名前を呼ばれ後ろを振り返ると、本人がそこに立っていた。
薄暗いキッチンに現れた藍里は、神々しく思えるほどだった。
鎖骨から胸もとにかけて見える白い稜線に、蒼佑の男としての本能が昂る。
「私はありますよ、下心……」
ほんのり頬を染め恥ずかしそうに目を伏せる藍里からそう告げられたときには、理性が吹き飛び、なにも考えられなくなった。
同じ気持ちなのだと思ったら、頭よりも先に身体が動いていた。藍里を引き留め柔らかい唇をこじ開け、なにもかもを奪いつくす。
もう自分で自分を止められそうにない。胸の内から湧き出る衝動には抗えなかった。
「俺のものにしていいか?」
コクンと頷いた彼女を抱き上げベッドまで連れて行き、心ゆくまで生まれながらの芸術品を愛で溶かす。
サラサラと揺れる髪も、ぷっくりと膨らんだ唇も、乳白色の滑らかな肌も恐ろしいほどに綺麗だった。
フィレンツェの街並みも、意匠を凝らした名建築も到底彼女には敵わない。
蒼佑はあえかに喘ぐ藍里を腕に抱きながら、甘くかぐわしい匂いに溺れた。