内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「この扉は?」
「ああ、ここは祖父のコレクションルームだ。見てみるか?」
「いいんですか?」
「ああ、もちろん」
蒼佑は使い込まれた真鍮でできた鍵束を執務室から持ってくると、ふたつの鍵穴にそれぞれ差し込んだ。
「うわあ! すごい!」
「ここには祖父が趣味で集めた美術品を置いてある。俺もすべてを把握できていない」
コレクションルームの中にはおびただしい量の美術品が保管されていた。
桐箱や緩衝材に包まれた美術品が乱雑に置かれていて、足の踏み場もないくらいだ。
「保管してあるだけなんてもったいない……!」
「もったいないって言うのは藍里だけだろうな。みんな値段ばかり気にするから」
蒼佑はさもおかしいと言わんばかりに声をあげて笑った。
たしかに高価な美術品を所有することに意義を見出す者もいるだろうが、作品を見てくれた人を楽しませることが作者の本懐だと藍里は考えている。
コレクションルームの状況は宝の持ち腐れとしか言いようがなく、とても看過できない。
「ママ……」
璃子が怯えた様子でぎゅっと抱きついてくる。
窓を塞いであるせいでコレクションルームは薄暗く、子どもには怖い場所に思えたのだろう。