内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
(それにしても、すごい状態ね……)
チラリと眺めただけだが、分厚い埃を被っている物がいくつもある。管理が行き届いているとはとても言えない状態だ。
「いつからこの状態なんですか?」
「俺が二年前にこの屋敷を譲り受ける前からだな。どうにかしようにも貴重な美術品の管理を家政婦に任せるわけにはいかないし。そのうちは人の手を入れて整理するつもりだ」
「そうですか……」
蒼佑の言うことはもっともだが、いつまでも乱雑なままではいけない。
美術品は管理が命だ。手遅れになってからでは遅い。
適切な保管環境を維持できなければ、劣化してしまうものもあるだろう。
「旦那様、昼食の支度ができました。食堂にどうぞ」
コレクションルームを眺めていた藍里たちに声を掛けたのは四十代ぐらいのエプロンを着た女性だ。
「家政婦の小牧さんだ。この屋敷の管理全般をお願いしている。他にも通いの家政婦や使用人がいる。おいおい紹介しよう」
「小牧です。よろしくお願いします」
蒼佑から紹介され、小牧は藍里に会釈した。
「ママ〜! おなかしゅいたの〜!」
ご飯と聞いた途端、藍里がキラキラと目を輝かせる。
「さあ、食堂に行こうか」
蒼佑はクスリと笑いながら、コレクションルームの鍵を閉めた。
食堂に到着すると、テーブルの上にはすでにカトラリーが準備されていた。
藍里たちが席につくと、小牧がワゴンに乗せた料理の数々を次々テーブルに置いていく。