内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「私もなにかお手伝いを……」
「藍里、給仕は彼女たちの仕事だ」
「ええ、そうですとも。奥様はお座りになっていてください」
ふたりから座っているように言い含められ、椅子から腰を浮かせかけていた藍里は元通りに座り直した。
(お、奥様……)
藍里がこの屋敷にやってきたのは蒼佑と結婚するためだし、奥様と呼ばれるのは当然なのかもしれないけれど。
(落ち着かない)
今まで璃子の様子をキッチンから窺いながら、慌ただしく食事の支度をするのが普通だった。
いきなり何もしなくていいと言われ、皿が運ばれるのを待っているだけなんて、逆に困ってしまう。
「おむらいすだあ!」
藍里が困惑する一方、首にスタイを巻きチャイルドチェアに座っていた璃子はお皿の上の黄金色のオムライスを見て嬉しそうな声をあげた。
「よかったね、璃子」
「うん!」
璃子はスプーンを持ち、自分でオムライスを口に運ぶ。喜ぶ璃子の様子を見て、藍里の肩から力が抜けていき、ようやく目の前のオムライスを口にする。
「とっても美味しいです」
小牧が作ってくれたオムライスは、洋食屋さんで食べるオムライスのようにコクがあり美味しかった。
「ありがとうございます」
正直に感想を述べると、小牧は微笑みながらグラスに水を入れてくれた。