内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
食事が終わりリビングに戻ると、藍里は恐るおそるカウチソファに腰を下ろした。引っ越し業者がやって来るまで、まだ時間がある。
食後の片づけも言わずもがな、家政婦の仕事だ。
すっかり時間を持て余した藍里は璃子が新しいおもちゃで遊んでいるのをぼうっと眺めていた。
「ママ……」
「どうしたの? 眠くなっちゃったの?」
「うーん……」
眠気に負け目を擦りながら甘えるように膝に乗ってくる璃子をベッドルームまで連れていく。
トントンと背中を叩いてやると、ほんの数分で寝息を立て始めた。
知らない場所に来て、いつもよりはしゃいでいたので疲れていたみたいだ。
「璃子は?」
璃子を寝かせてからリビングに戻ると、仕事で席を外していた蒼佑がソファに座っていた。
「寝ました。一時間は起きないと思います」
「座ってくれ」
言われた通りソファに座るやいなや、蒼佑は薄茶色の枠線で縁取られた婚姻届をテーブルに置いた。
「ここに記名と印鑑を」
蒼佑に言われるがままに必要事項を記入すると、素早く藍里の手もとから婚姻届が回収される。