内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「明日、提出しに行こう」
「わかりました」
いよいよ蒼佑と結婚するのだ。覚悟はしていたけれど、いまだに実感が湧かない。
「左手を」
左手を差し出せば、蒼佑手ずから薬指に指輪が嵌められる。
「今度ちゃんとしたものを贈りなおすから、今はこれで許してくれ」
蒼佑はいかにも不服そうだが、用意してもらった指輪だって有名なジュエリーブランドのロゴが刻印された立派なものだ。
よく見ると彼の薬指にも同じデザインの指輪が嵌められている。
「これからよろしく。俺の奥さん」
恭しく手の甲にキスが落とされ、いやおうなしに鼓動が早まる。
「よ、よろしくお願いします!」
恥ずかしさのあまり声が裏返り、思わずパッと手を振りほどいてしまう。
そんな藍里を蒼佑は怒るでもなく、ただ穏やかな瞳で見つめている。
「璃子は……藍里によく似ているな」
「よく言われます」
「早く俺にも懐いてほしい」
今日の璃子は藍里の後ろに隠れるか、抱っこされるばかりだった。
ふたりの間にある埋められない距離に、離れていた時間の長さを改めて感じる。
果たして璃子は蒼佑を父親として受け入れてくれるだろうか。