内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

「はい、おしまい」
「もういっかい!」
「今読んだばかりでしょう?」
「もういっかい!」

 璃子は興奮した様子で、『もういっかい』を繰り返すばかりだ。

(こうなるとしつこいんだから)

 何度も絵本をねだられた藍里はとうとう根負けした。

「じゃああと一回だけだからね」
「うん!」
「楽しそうだな」

 声のした方に視線を向けると、出掛けていたはずの蒼佑がいつの間にか帰宅していた。ジャケットを脱ぎながら、カウチソファに座るふたりに近寄る。

「俺が読み聞かせてもいいか?」
「それは構いませんけど……」

 本当に大丈夫なのかと訝しみつつ、藍里は蒼佑に絵本を手渡し、読み手を交代した。

「璃子、おいで」

 蒼佑がそう言って膝の上を叩くと璃子は大人しく、膝の上に座った。

「ピンクのうさちゃんはどこに隠れているかな〜?」
「ここ〜!」
「おっ! よくわかったなあ!」

 大げさに褒めると璃子はえへへとうれしそうに頬を赤くした。
 ふたりはお決まりのセリフに合わせ、絵本を指さしていく。
 なんなら藍里が読み聞かせてやるときより、ずっと楽しそうだ。

(蒼佑さんにお願いしてよかった)

 血の繋がった親子のなせる業なのか、璃子も安心した様子で蒼佑に身を任せている。
 リビングにはふたりの楽しそうな笑い声がいつまでも途切れずに響き続けた。
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