内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
「今日は寝坊してすみませんでした」
昼食を食べ終わり璃子がお昼寝をしている最中、藍里は蒼佑に今朝の失態を謝罪した。
「別に謝ることじゃない。今日から俺たちは夫婦なんだから」
「夫婦……」
「ああ。婚姻届は無事に受理された」
蒼佑は指輪の存在を確かめるように、藍里の左手を握り、ふたりはしばし互いに見つめ合った。
(まただ……)
昨日と同じように心臓がトクトクと早鐘を打ち始める。
「あ、あの! 蒼佑さんにひとつご相談があります!」
「相談?」
ふたりの間に流れるソワソワした空気を変えるべく、藍里は唐突に切り出した。
「父の絵はどこに保管したらいいでしょうか?」
大空を駆ける鷹の絵は、譲治の手が及ばぬようアトリエから持ち出されたあと、ずっと藍里のアパートに保管されていた。
引っ越しに伴い屋敷まで持参したが、その処遇は絵の所有者である蒼佑に委ねるべきだ。
「どうするもなにも藍里の好きな場所に飾ればいい。このあたりなんかどうだ?」
蒼佑はそう言って入口の真横にある白壁を指さした。