内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。

「リビングに飾っていいのでしょうか?」
「ベッドルームにするか?」
「いえ、そういう意味ではなく……」

 高価な絵画はしばしば投資目的で購入される場合もある。
 買い手を見つけるために画商に預けたり、盗難や劣化を防ぐため然るべき場所で厳重に保管されるケースもある。
 リビングに飾るなんて、普通は許されない。

「俺は投資目的で絵を買ったわけじゃない。絵の価値を考えず、簡単に売られてしまうのを防ぎたかっただけだ」
「そうだったんですね」

 彼の美術品に対する想いが昔と変わりなくて、藍里はどこかホッとしていた。

「どこがいいかな?」

 蒼佑は腕組みしながらリビングをあちこち歩き回り、どこに飾るのがいいか吟味し始めた。

「うん。やっぱりここにしよう。どうかな?」
「いいと思います」

 直射日光の当たらないチェストの上に設置場所が決まると、蒼佑は工具で金具を取り付けた。
 クローゼットに置いておいた絵を彼に渡せば、大空を駆ける鷹の絵が見事に飾られる。

「実物はやはり素晴らしいな……」

 蒼佑はほうっと息を吐いた。
 そのまま、しばらくふたりで父の絵を眺める。
 大空を駆ける鷹の絵は製薬会社のCMに起用されたことで一躍脚光を浴び、日本人なら誰でも知る有名な絵画になった。

< 86 / 187 >

この作品をシェア

pagetop