内緒でママになったのに、溺愛に目覚めた御曹司から逃れられない運命でした。
4.紡がれた運命
「こら、璃子! 待ちなさい!」
「きゃははっ!」
先に風呂を終えた璃子を蒼佑に預けたあと、もう一度湯船に浸かっていた藍里がバスルームから出てくると思わぬ光景が目に飛び込んでくる。
パジャマ姿の璃子が濡れた髪を振り乱しながらリビングを走り回り、そのうしろを蒼佑がドライヤー片手に追いかけ回していた。
完全に面白がっている璃子に対し、蒼佑は真剣な面持ちで立ち塞がる。
「捕まえた! ほら、早く乾かさないと風邪を引くぞ! また病院でにがーいお薬をもらわないといけなくなるぞ!」
璃子は二週間前にひどい風邪をこじらせたばかりで、最近になってようやく調子が戻ってきたところだ。
「おくしゅり、いやあ~!」
薬のまずさを思い出したのか、うえっと舌を出す。
なんでもよく食べる璃子だが、さすがに病院で処方された薬は口に合わなかったらしい。
「じゃあ、ちゃんと髪を乾かそうな」
「はーい……」
璃子は途端に大人しくなり蒼佑に従った。脇の下に手を差し入れられ、猫のように身体がのびた状態で椅子まで運ばれて行く。
あまりに微笑ましい光景に藍里の口から自然と笑みがこぼれる。
逃げ回る我が子を見事椅子に座らせた蒼佑は、璃子の髪をブラシで梳かしつつ、器用にドライヤーを当て始める。
最初はどうにもおぼつかない手つきだったが、この三か月で随分とドライヤーが上手になった。