キミと桜を両手に持つ
「ええ、何度か。これはなかなか面白い企画ですね」
「そうなんです!男性の方で口下手な方でも、やはりエリートだけあって皆さんこういう頭脳ゲームが得意なんですね。それで男性がリードして女性と一緒に謎を解くんですけど、これが結構うまくいってるんです。男性も女性も協力し合って謎解きをしてとても楽しい時間を過ごしているようです。ゲームが終わった後はこの脱出ゲームのあるビルの隣にあるレストランで立食パーティーになるんですが、皆さんリラックスされてて話も盛り上がってマッチングするカップルが沢山いるんですよ」
わぁ、すごく楽しそう!いいなぁ……私も脱出ゲームに参加したいなぁ……。
だんだんと思考が婚活から離れて脱出ゲームのことばかり気になってしまう。興味津々で資料を読んでいると琴森さんが
「藤堂さん、よろしければ参加してみますか?会場の雰囲気とかもしサイト作りの参考になれば」
と藤堂さんに尋ねた。
「いえ、私は──」と彼が断ろうとしていると私の隣にいた詩乃さんが突然ポンっと手を叩いた。
「如月さん、その婚活パーティーぜひ参加させてもらったら?」
「えっ?」
「え?」
私と藤堂さんは同時に声を上げた。
「サイトのイメージを掴むためにもいい勉強になると思うの」
「神崎さん、俺達はサイト制作の為にここに来ている訳であって婚活パーティーに参加する為じゃない。結婚相手を探すつもりもないのに参加したら失礼だろう」
藤堂さんは小声で言いながら詩乃さんを忌々しげに睨んだ。
「あら、でも如月さんはまだ結婚もしてないし恋人もいないから婚活パーティーに出席しても問題ないと思うの」
詩乃さんは睨んでいる藤堂さんを物ともせず続ける。
「如月さん、今フリーなんですか?」
「えっ?あ、はい」
脱出ゲームの資料を見ていた私は琴森さんに問われて慌てて顔を上げた。