キミと桜を両手に持つ
「さっぱりわかりません。でも犯人は坂上将吾です!」
そう容疑者の一人の名前を言い切る私を見て藤堂さんはまた声をあげて笑った。
「なぜそう思うんだ?」
「彼の鞄に入っていたスズランですけどこれは猛毒です。きっとこれで殺害したんです」
「毒だったら藤澤裕子も殺虫剤を持ってる」
「こんな暗くてジメジメしたところに来るなら殺虫剤くらい女の子だったら持ってきます」
ここが山奥のホテルという設定だからか部屋の中の装飾や壁もじめっとした薄気味悪いデザインになっている。こんな山の中という設定なら女性が殺虫剤を持っていても不思議じゃない。でもスズランはわざわざ持ってこないと思う。
藤堂さんは私の説明を一通り聞いてクツクツ笑うと
「とりあえず犯人は誰かという事は置いといて、まずはこのスーツケースを開けないとな」
と言って腕を組みながらテーブルの上にあるかき集めたアイテムを見た。
「各本の裏側に活字で大きく書いてある数字があったな。本は5冊。ロックの暗号も五桁。多分この本からヒントを得るんだな」
「でもどうすれば?」
「まずは本の発行年順に並べてみようか」
早速本を発行年の古い順から並べて、本の裏にある数字を順にロックの五桁に合わせてみる。でもやっぱり鍵が開かない。
「やっぱりダメですね……」
やっぱり発行年順なんかじゃないのかも。数字はこのトランプにもある。でもトランプの数は8枚。ロックの桁数には合わない。
「じゃあ、新しい順でやってみよう」
今度は発行年の新しい順番に並べて数字を順番に暗証番号を入れるとなんと鍵がカチッと開いた。
「すごい、藤堂さん!鍵が開きました!!」
嬉しくて思わず彼に抱きついた。本を発行年順に並べるなんて思いつくだけでもすごい。