キミと桜を両手に持つ
彼女は去年この制作部に入ったデザイナー。私より1つ年下の27歳で、表情豊かで元気もあってとても可愛い。
もともと素肌がきれいなのかいつもナチュラルな感じのメイクをしていてセミロングの髪の毛も今日はポニーテールにアップしている。
着ている服はキュッと細くしまったウエストを強調した淡い水色のスカートにゆるっとした白いシャツ。思わず守ってあげたくなるような、そんな可愛い女の子だ。
「如月さん、今日は早いんですね」
「うん、今週は忙しくなるからすこし早めに出社したの。あ、そのピアスすっごく可愛い!」
彼女の耳にはこの季節らしく桜の花びらのようなピンク色のストーンの入ったピアスが揺れている。アップした彼女のヘアスタイルにとても似合っている。
「ありがとうございます!実はプレゼントでもらったんです」
彼女は嬉しそうにしてピアスを撫でた。
すごく似合ってるなぁと思ってじっと眺めていると、彼女はそのピアスを撫でながらチラリと後方を見た。すると後ろからフロントエンドエンジニアの佐伯くんがやってきて彼女のピアスにさりげなく触れると耳に口を寄せてなにか囁いた。
何を囁かれたのか知らないけど、花梨ちゃんは顔を真っ赤にした。佐伯くんはそんな彼女を見て微笑む。その親密な仕草になにか見てはいけないものを見た気がして思わず目を逸らした。
えっ……ええっ!? 二人ってそういう関係だったの? いつの間に?
バレないようにPCのモニターを見るふりをしながら花梨ちゃんと佐伯くんを盗み見た。