キミと桜を両手に持つ
この制作部には仕事のできるハイスペックなイケメンが二人いる。一人は別のチームにいる浅野くんで、彼は既に結婚している。
もう一人はうちのチームの佐伯くん。彼は独身で私より1つ上の29歳。背もスラリと高く眼鏡をかけたその端正な顔立ちはとても知的な感じがする。社内でも佐伯くんを狙っていた女の子は沢山いた。
うわー、これは知れたら皆んな泣いちゃうだろうな。そう言えば隣のチームの小鳥遊さん、佐伯くんの事好きとか言ってたっけ。そんな事になってるなんて全然知らなかった〜。そっかー。花梨ちゃん可愛いもんね。あーなんか羨ましい……。
捨てられた私とは雲泥の差。やっぱり小さくてちょっと隙がある感じの女の子は可愛くてモテる。……そう言えば和真の彼女もこんな感じの子だったな、と急に思い出す。でも花梨ちゃんの方が絶対に可愛いけど。
羨ましく思うけど、でも誰かがそうやって幸せになっているのを見るとなんだかとても微笑ましい。自分もいつか幸せになれるような気がして少し元気が出る。
その後頑張って仕事をしていると前田さんが私を呼んだ。
「如月さん、今ミーティングしたいんだけどいい?」
「はい、大丈夫です」
「じゃ、そこの会議室で」
前田さんはリフレッシュルームの隣にあるガラス張りの小会議室を指すと先にそこへ入っていた。その彼の後ろ姿には疲労がにじみ出ていている。
ご飯、ちゃんと食べてるのかな。なにか持って行ってあげようかな…
そう思ってミーティングルームに入る前に隣にあるリフレッシュルームに立ち寄った。
この制作部のリフレッシュルームには社員がいつでもコーヒーが飲める様にコーヒーサーバーもあるけど、無料で食べれる簡単な軽食やおやつが沢山ストックされている。