キミと桜を両手に持つ
「花園さん、そんなに緊張しなくても大丈夫です」
「は、はい」
彼女の右隣に座っている男性、神楽坂さんが先ほどから何度か彼女のフォローに入っている。マネージャーと名刺に書いてあるので彼女の直属の上司かなと思う。
この神楽坂さん、眼鏡をかけたなかなかのイケメンで、藤堂さんと比べると大人の男という圧倒的な存在感はないものの、でも同じように真面目そうなストイックな雰囲気がある。身長もすらっとしていて普通の男性よりは高い。年齢も藤堂さんと同じくらいかなと思う。
「商品の詳細ページなんですけど、この説明文の下あたりにこの服とコーディネートすると似合う商品を表示したらどうかと思うんですがどうでしょうか?それでこのサムネイルにその商品に飛ぶようリンクをはりたいんです」
「なるほど。なかなかいい案ですね」
「でもこの方法で売上げに繋がるでしょうか?」
彼女は先ほどから一つの提案をする毎に何度も自信なさげに私にこうして尋ねてくる。
「ええ、繋がると思いますよ」
「花園さん、如月さんもそう仰っているし、あまり後ろ向きに考えないように」
神楽坂さんはそう彼女をフォローする。
「は、はい、そうですね。すみません」
と彼女は私に頭を下げた。
「大丈夫ですよ。弊社には他社にないウェブサイト構築の技術とデジタルマーケティングの知識があります。必ず売り上げに繋がるよう制作いたします」
私はクライアントである彼女の不安を何とか取り除こうと自信を持ってそう答えた。
「あの、申し訳ありませんでした。その、わたし今回のような大きな案件を担当するのは初めてで……」
ミーティングが終わった後、彼女はとても申し訳なさそうに私に頭を下げた。