キミと桜を両手に持つ
「花園さんも藤堂さん狙いなのかな。だったら高橋さんよりもっと嫌だな……」
「えっ?どうして?」
「藤堂さんて、あの容姿だからいろんな美女からアプローチされると思うんです。それも高橋さんの様に自分が美人だと自信のある人たちばかりです。だって美人って自信がなかったら藤堂さんみたいな男性にはなかなかアプローチ出来ないですから。
そんなイケイケの美女がぐいぐい彼に迫ってくる中、ある日花園さんのような女性に出会ったらどう思うでしょうか?
純粋無垢で化粧や洋服なんかで飾らなくても可愛くて、仕事も健気に一生懸命、でも自分に少し自信がない謙虚で控えめな女性。藤堂さんのように包容力のある男性は絶対に庇護欲を掻き立てられます」
「でも、どうしてそれが嫌なの?」
「確かに控えめで可愛いかもしれませんけど、私から見るとあまりにも自己評価が低過ぎます。あんな自己肯定感の低い人でなく藤堂さんにはもっと前向きな素敵な女性が似合っています」
花梨ちゃんはそう言って私を真っ直ぐに見た。
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「アグノスどうだった?」
アグノスから帰社後、リフレッシュルームでぼーっとしながらカモミールティーを飲んでいると前田さんがコーヒーを持って隣に座った。
「いい感じだと思います。向こうの要求を全部のんでも予算内に収まると思います。スケジュールもすこし余裕が出るように交渉してあるので途中でトラブらなければ納期に間に合うと思います」
「そう。それで彼女には会った?」
「藤堂さんと話がしたいと言ってきました」
それを聞いた前田さんは小さく笑った。
「だから言ったでしょ?俺さ、こう見えてもいつも如月さんの味方だから」
彼はコーヒーを一口飲むと、首を傾げて私を見た。
「どうしていつも私に構うんですか?例え私が傷ついたとしても前田さんが気にする事ってありますか?」