キミと桜を両手に持つ
結局あまりにも不安がる彼女の為に婚約。そしてこのマンションも大雨の中彼が帰ってくるのを待ったりしなくてもいいように二人で住んだらいいのではと思って購入したらしい。
「彼女もあの頃はまだ若かったしあまり恋愛経験もないみたいだったから色々と不安になったんだと思う。でも毎日愛情を注げばもっと自信がついてくると思ったし、仕事だって経験を重ねればそのうちできるようになって自信がついてくると思ったんだ。彼女は変わると思ったんだ」
そんな中、ある日彼女は会社の飲み会に行くと藤堂さんにメッセージを送ってきた。
お酒に弱い彼女を心配した彼は仕事帰り迎えに行くも既に終わったのかレストランには誰もいない。慌てて彼女に連絡するも電話も繋がらない。
心配して藤堂さんは何度も電話やメッセージを送りながら彼女のマンションの前で待ってみたり再び飲み会があった場所まで戻ってみる。
その時ふと飲み会のあったレストランの2ブロック先にホテル街が見えて、何故か彼女が誰かとそこにいるような気がしたらしい。
「彼女の事をよくわかっているからかな。俺みたいな口下手な男じゃなくて、常に側にいてくれて、彼女の欲しい言葉を思う存分言ってくれる男と一緒のような気がした」
一睡もしないでホテル街をうろつきながら待っていると、早朝ホテルから彼女が男と手を繋いで出て来るのが見えた。
彼らが近くの駅まで手を繋ぎながら歩いていくのを見届けた後、藤堂さんは家に帰って彼女に婚約を破棄したいと伝えたらしい。
彼女の話だと酔った勢いで会社の上司と一夜を共にしたという。その上司から愛してると情熱的に口説かれてつい流されてしまったらしい。酒に酔った一夜の過ちだから許して欲しいと彼女は懇願した。