キミと桜を両手に持つ

 そう、愛してるなんて思ってなくてもそんな言葉簡単に言える。それは和真があの二年間で十分に証明してくれた。

 急に和真に対しても花園さんに対しても怒りが込み上げてくる。悔しくて悲しくて涙で視界が滲んだ。

 私も和真の事は私なりに精一杯大切にしたし愛した。そして藤堂さんも精一杯彼女に尽くした。なのにその気持ちは全くわかってもらえなかった。

 「凛桜が泣く事なんてなにもないよ。今はもう何とも思ってないし」

 藤堂さんは微笑むと私の顔に手を伸ばし優しく涙を拭った。

 「でもこんなの悲しすぎます。私だったら絶対に藤堂さんを裏切らない。私だったら逆に藤堂さんを幸せにしてみせます」

 それを聞いた彼は小さく声をあげて笑った。

 「凛桜ならきっと俺を幸せにしてくれる。君は彼女と違って強い」

 「でも和真には私は一人でも生きていけるから誰も必要としていないだろって言われました」

 「確かに君は一人でも生きていける力強さがある。でもそれって悪いことなのか?」

 「……よく分かりません。母には一人でも強く生きていけるようにって、厳しく育てられました。でもそういう風に育ってきたからか、一人で生きていく方が似合ってるってそう思われてしまいます。本当は違うのに……そうじゃないのに……。結局和真にもどうせ彼の事も必要としていないんだろうと思われて、それで他の女の子へと行ってしまいました」

 あの時和真が私ではなく後輩の女の子を必死に庇っていたのが目に浮かぶ。

 「凛桜、俺たちが出会った頃覚えてるか?このマンションの下にある桜並木がちょうど満開だっただろ」

 「はい。すごく綺麗でしたよね!」

 突然そう尋ねられ、彼と出会った当時を思い出す。このマンションの前は桜が咲き乱れていて花びらが雪のように綺麗に舞っていた。
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